がん検診の有効性評価
がん検診の目的は、がんによる死亡を減らすことです。したがって、がん検診の有効性を評価するためには、がんの死亡率や死亡数の減少を証明することが望ましいとされます。
評価指標としての死亡率
がん検診の評価指標として発見率や生存率を用いる事は正しくありません。
発見率は、対象となる集団の有病率の影響を受けます。例えば、肺がんは高齢者の疾患のため、高齢者の多い集団の方が発見率は高くなりますが、がん検診の有効性を示すことにはなりません。
また、二人の肺がん患者さん(検診を受けて発見された人と症状で発見された人)がいて、肺がんが発生してから死に至るまでの期間が同じと仮定した場合、がん検診受診者は、症状によって発見された方より早期に発見されるので、発見から死亡までの期間(生存期間)は長くなります。しかし、実際には肺がん発生から死亡までの期間は同じなので、生存率が高くてもがん検診の有効性を示す事にはなりません。
評価方法としてのランダム化比較試験
有効性評価方法として最も信頼性の高い方法はランダム化比較試験です。
ランダム化比較試験は、がん検診の対象となる集団を検診群と非検診群に公平に振り分け、検診受診の有無以外のさまざまな因子が両群で偏らないようにし、両群のがん死亡率を検討してがん検診の有効性を評価する手法です。振り分けてから両群を追跡して、がん死亡の有無を調査することになるので、極めて多数の研究参加人数と膨大なコスト、長い調査期間が必要になる研究手法です。
その他の有効性評価方法としては症例対照研究という手法が用いられます。症例対照研究では、がんの死亡者について過去のがん検診受診の有無を調べ、その影響を検討するものです。検診受診者は健康に関心が高い人が多く、非受診者に比較して対象疾患の罹患率や死亡率が低い可能性が有りますが、この研究手法ではこうした集団の偏りが紛れ込む事を防げず、ランダム化比較試験と比べて信頼性が低いと考えられています。一方、過去に関して調査する手法のため、ランダム化比較試験と比較して、コスト削減と研究期間の大幅な短縮ができるメリットがあります。