研究内容

研究内容

日本人のがん死亡者数第1位のがんは肺がんです。
JECS Study(ジェックス)とは、肺がん検診において胸部CT検査の併用が、肺がん死亡減少に有効かどうかを検証する比較試験です。
肺がん検診に胸部CT検査を併用することで、胸部X線検査では見つからない肺がんが見つかることを期待されますが、一方で、がんではないのに精密検査が必要と判断されて、不必要な検査をすることになってしまうことも予想されます。現時点で、肺がん検診において胸部CT検査を併用することが,肺がん死亡の減少に有効かどうかは不明です。JECS Studyの重要性は、この不明な点を日本で初めて解明することにあります。

ランダム化比較試験について

JECS Studyでは「CTでもX線でもどちらの検査法でも良い」と言って頂ける方を集め、コンピューターで公平に分け、半分の方にCT併用の検診(CT群)、もう半分の方にX線のみの検診(X線群)を行って頂きます。このように公平に二つのグループに分けて比較検討する研究手法をランダム化比較試験と言います。ランダム化比較試験では、グループ間で異なるのは比較する因子のみで、その他のあらゆる因子についてはグループ間での偏りが解消されると考えられています。その結果として比較したい因子の正確な比較検討が行えます。今回の場合では、検診内容がCT併用かX線のみかが異なるだけで、その他の偏りは解消されます。例えば、どちらかのグループの方が、健康志向の強い人が多いとか、喫煙者の割合が多いとか、さらには現時点では知られていないような肺がんの危険因子を有する割合が多いとかがあると、これらの影響によってCT併用かX線のみかという比較結果が修飾されてしまいます。この問題を解決する唯一の方法がランダム化比較試験ということになります。ランダム化比較試験は、ある疾患に対する治療法Aと治療法Bの有効性を比較する場合などに頻繁に用いられる研究手法ですが、今回のように検診手法を比較検討する場合にも用いられてきました。たとえば、アメリカで実施されたThe National Lung Screening Trial(NLST)では、重喫煙者約53000人を一方に胸部CT検査を、他方に胸部X線検査を実施するランダム化比較試験を実施し、胸部CT検査による肺がん死亡減少効果を示しました。

対象と方法

今回の研究の対象は、50歳以上70歳以下、かつ喫煙指数600未満で、この比較試験の意義に賛同される方です。喫煙指数とは、1日の喫煙本数x喫煙年数で計算されます。例えば、1日20本、30年間喫煙すると喫煙指数600となります。この研究では、胸部CT検査を併用する検診(CT群)、併用しない検診(X線群)のいずれの場合も10年間行う予定です。X線群の方は、初回に胸部X線検査を受けて頂き、次回以降は通常の住民・職場検診で胸部X線検査を受けて頂きます。CT群の方は、初回と6年目の2回胸部CT検査を受けて頂き、その他の8年は通常の住民・職場検診で胸部X線検査を受けて頂きます。X線群、CT群のいずれの場合でも、1年に1度程度、健康状態や病気に関する調査を行わせて頂きます。調査の方法は、ご本人あるいはご家族への手紙あるいは電話などによる問合せ、通院・入院されている医療機関への問合せ、がん登録などへの問合せとなります。

費用負担について

今回の研究に参加された場合、CT群の方は初回と6年後の2回の胸部CT検査が無料となります。X線群の方は初回の胸部X線検査が無料となります。但し、これらの検査によって異常が見つかり医療機関で精密検査や治療が必要になる場合は、通常の保険診療となりますので窓口負担が生じます。また、万が一の話ですが、今回研究に参加されてCTやX線検査を受けた際に転倒して骨折してしまったような場合にも、通常の保険診療の費用がかかります。尚、今後10年間で、CT群の方は8回、X線群の方は9回、住民・職場検診の肺がん検診を受けて頂きますが、その際には通常の自己負担がかかります。 尚、X線群の方は、「採血+腹部CTによる内臓脂肪と健康との関係を長期間観察する研究」に無料で参加できます。採血、生活習慣調査、腹部CTによる内臓脂肪検査を一度だけ行いますので、ご希望の方は、お申し出ください。研究に参加される事でご自身の内臓脂肪がどの程度かを知る事ができます。勿論希望されなくても構いません。CT群の方は予算の関係上この研究には参加できません。

予想される利益・不利益について

今回の研究に参加された場合、X線群の方は、実質的には、通常の住民・職場検診の肺がん検診を10年間受診される事と同じですので、研究参加によってあらたに得られる利益不利益はありません。CT群の方は、通常の肺がん検診を受診する事に比べて、もしかすると肺がんによる死亡を減らすことができるかもしれません。一方、不利益としては、がんではないのに精密検査が必要と判断されて、不必要な検査が行われる可能性があります。また、がんであっても非常に増大速度が遅く何もしなくても天寿を全うできるような場合でも手術が行われる可能性があります。この研究では、このような不利益をできるだけ回避する目的で、日本CT検診学会の基準に従って精密検査を行うように規定していますが、すべての不利益を回避できる訳ではありません。また、CT群の方は、2回の胸部CT検査の分だけ、余計に放射線被曝することになりますが、今回対象の年齢の方には大きな問題は無いと考えられています。

研究参加の同意について

今回の研究に参加されるかどうかは、参加される方の自由意志によります。また、途中で参加を撤回することも可能です。

研究結果の公表と個人情報保護について

今回の研究の結果は、関連学会等において公表されます。しかし、個人情報が公表される事はありません。また、研究を通じて知り得た個人情報に関しては、インターネットから独立した環境で情報管理担当者のみが管理することで、情報漏洩を防ぎます。