研究代表者からの挨拶

研究代表者からの挨拶

東北医科薬科大学 呼吸器外科 名誉教授・客員教授
佐川元保

はじめに

日本では、肺がんによる死亡が大変増加してきています。がんによる死亡の中では肺がんが1位であり、この傾向はしばらく続くと思われます。現在日本で行われています、胸部X線検査と喀痰細胞診による肺がん検診は、肺がんによる死亡を約半分に減らす効果があることがわかっているのですが、やはり万能ではなく、検診を受けても肺がんで亡くなる患者さんもいるのが実情です。そこで、より良い肺がん検診の方法がないかを探るために、この研究が計画されました。

低線量胸部CTによる肺がん検診

最近,胸部のCT検査(コンピューター断層撮影)を肺がん検診に用いる方法が一部で行われ始めました.その結果,多くの早期がんが見つかるようになったのですが,一方で,本来ならば治療する必要のないような病変も手術してしまったりする例があるのではないか,ということも危惧されており,CT検診とX線検診のどちらがより有益であるかはわかっていません.CT検診とX線検診を比べるために,当初は厚生労働省主導で本研究が開始され、2015年度より厚労省・文科省などが医療分野の研究開発を行うために立ち上げた日本医療研究開発機構が主導する研究班(佐川班)でこの研究が引き継がれました。

本研究のあらまし

胸部X線はすでに肺がん検診として効果があることがわかっています。胸部CTも良さそうではあるのですが、不必要なものを見つけすぎるなど心配な点もあり、総合的にみてX線による検診よりも有益である証拠はまだありません。そのような場合に2つの方法を比べる時には、「どちらの検査法でも良い」と言っていただける方を大勢集めて,コンピューターで公平に分け,半分の方は「CTを含む群」として、10年間に2回、1年目と6年目にCT検診を行います。もう半分の方は「X線検診群」として、1年目にX線検査を行います。どちらの群もそれ以外の年は通常の現行検診を受けていただくようお願いしています。CT検診とX線検診のどちらがより良いのかは現在のところ不明ですので,どちらかが「損」だの「得」だのということはありません。X線とCTのどちらの検査も、肺がんを数多く診断・治療している専門医が、責任をもって診断します。それらの方々の10年間の経過をフォローして健康状態などを比較する,というのが研究の概要です。精密検査が必要になった場合には健康保険で行われますが,検診そのものの費用は無料で行われます。(X線群の方は「内臓脂肪CT撮影」を無料で受けることができるオプションもあります。ただし、地区や施設によりオプションがない場合もあるため、担当者にお聞き下さい)

おわりに

本研究は、皆さまの御協力により、予定の27,000人の御登録を得ることができました。誠にありがとうございました。新規の募集は終了しましたが、引き続き本研究へ御協力を賜りますようお願い申し上げます。